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損傷予防プログラムとは

スポーツ損傷予防プログラムとは、競技ごとに多い骨折・靭帯損傷・筋肉の傷害などを科学的な根拠にもとづいて減らすために設計されたウォームアップ・トレーニング・体のケアの体系です。

単なる準備運動とは異なり、「その競技でどのような動作のときにけがが起きやすいか」を分析した上で、バランス・筋力・着地動作の質を高めることを目的としています。指導者・選手・保護者がともに理解し、日常の練習に取り入れることが重要です。

損傷予防プログラムは「けがを恐れて動きを制限する」ものではなく、「正しい動き方を身につけることでけがを減らしてパフォーマンスの低下を防ぐ」ことを目指しています。

一方で、残念ながら競技力の向上に直接つながるわけではないため、なかなか現場に取り入れるのが難しいという意見も多くあります。当院院長の所属しているグループが行ったアンケート調査でも、現場指導者がプログラム導入にあたって感じるハードルや課題が明らかになっています。[1]

なぜ予防が大切か

予防プログラムと言いながらも、すべてのスポーツ外傷を完全に防ぐことはできません。例えば、ACL損傷予防プログラムを行うことによって、ACL損傷は50%減少するといわれています。特に女性の場合は67%も減少すると報告されています。[2]ACL損傷の発生率はおよそ0.81%(10,000人に約81人)[3]とされています。福井県の15〜45歳の年齢層における受傷者数は年間約197人、福井市では80人前後と推計されますので[4]、これが半分になるインパクトは非常に大きいといえます。

その他の疾患に対するプログラムでも、適切な準備・体のケア・早期発見によって、発症の可能性を減らしたり、重症化を防いだりすることはできると考えられています。

「予防に勝る治療なし」という概念のもと、各競技団体や医療機関から予防プログラムが報告されています。まずは取り組んでみることをお勧めします。

発症の可能性を減らせる主なけが

  • 前十字靭帯断裂(ACL断裂):着地・方向転換時の非接触型損傷
  • 足首の捻挫:バスケットボール・サッカー・テニスで多い
  • 疲労骨折:陸上・野球・バレーボールなど反復動作の多い競技
  • 半月板損傷:膝への繰り返しの負担が蓄積するケース
  • オスグット病:成長期の膝の過負荷による骨端軟骨の障害(厳密には予防ではなく症状の軽減が目的になります)

各競技団体の公式プログラム

以下は日本の公式スポーツ団体、またはその国際連盟が公開・推奨する損傷予防プログラムです。各団体の公式サイトで詳細を確認できます。

サッカー

FIFA 11+(フィファ イレブンプラス)[6]

公益財団法人 日本サッカー協会(JFA)/FIFA Medical Assessment and Research Centre

FIFAが開発した、特別な器具を必要としないウォームアッププログラムです。ランニング・筋力・バランス・ジャンプの要素を組み合わせた20分程度のメニューで、けがの予防効果が世界各国の研究で確認されています。特に女子選手・ジュニア選手のACL損傷予防に有効とされています。PET検査を組み込んで筋活動を調査した研究でも、その効果が示唆されています。[5]

ACL損傷 肉離れ 捻挫 膝の傷害全般
JFA メディカル情報
ラグビー

ラグビー外傷・障害対応マニュアル(2026年版)[7]

公益財団法人 日本ラグビーフットボール協会(JRFU)/World Rugby

ワールドラグビーの教育プログラム「First Aid in Rugby」にもとづいて作成されたマニュアルです。傷害発生時の対応だけでなく、脳振盪の予防・競技復帰プロトコル・安全なタックル技術の習得など、予防的な内容を幅広く含んでいます。チーム登録には安全推進講習会の受講が義務付けられています。

脳振盪 頸部損傷 コンタクト外傷全般
JRFU 安全対策ページ
陸上競技

陸上安全ガイド[8]

公益財団法人 日本陸上競技連盟(JAAF)

日本陸上競技連盟が公式サイトで公開している安全ガイドです。競技種目ごとのリスクと対策、熱中症予防、疲労骨折の早期発見のポイントなど、指導者・選手が日常の練習で活用できる内容がまとめられています。

疲労骨折 熱中症 ランニング障害
JAAF 陸上安全ガイド
体操

傷害発生時の対応動画集[9]

公益財団法人 日本体操協会(JGA)

日本体操協会が公式サイトで公開している動画集で、傷害発生時の対応方法を実演形式で確認できます。体操競技は高い技術レベルを要求される一方でけがのリスクも大きく、指導者・選手・保護者が正しい初期対応を知っておくことが重要です。

転倒・落下外傷 急性外傷全般
日本体操協会 公式サイト

競技横断的な取り組み

特定の競技に限らず、複数の競技を対象とした傷害予防のガイドブック・統計データを公開している機関もあります。

6競技対応

スポーツ外傷・障害予防ガイドブック[10]

公益財団法人 スポーツ安全協会(Spo-An)

サッカー・野球・バスケットボール・柔道・ラグビー・水泳の6競技を対象に、各種目に多い外傷・障害とその予防プログラムをまとめたガイドブックです。PDF形式で公開されており、指導者・保護者・選手が自由にダウンロードできます。

サッカー 野球 バスケットボール 柔道 ラグビー 水泳
スポーツ安全協会 予防情報

テニス・バレーボール・バスケットボールについて[11]

日本テニス協会(JTA)・日本バレーボール協会(JVA)・日本バスケットボール協会(JBA)は、それぞれ医事委員会・医科学委員会を設置しており、競技団体としての医学的サポート体制を整えています。一般向けの単独予防プログラムの公開は現時点では確認できていませんが、スポーツ安全協会のガイドブックにバスケットボールの項目が含まれているほか、各協会の公式サイトで医事情報を確認することができます。

当院でのサポート

損傷予防プログラムは「知っている」だけでは効果が出ません。選手一人ひとりの動作の癖・筋力バランス・成長段階に合わせた指導が重要です。

当院でできること

  • 院内オープン型AI搭載MRIによる精密画像診断(患者さんが画面を確認しながら説明)
  • 超音波(エコー)を用いたリアルタイムの筋・腱・靭帯評価
  • 成長期アスリートへの疲労骨折・オスグット病などの早期診断
  • 日本スポーツ協会公認スポーツドクターによる競技復帰・予防の相談
  • スポーツドクターとしてのサポート相談

予防プログラムを始める前に確認したいこと

1

現在の身体の状態を知る

過去のけがや痛みがある場合、まず整形外科で状態を確認することが重要です。問題を抱えたまま予防プログラムを行うとかえって悪化することがあります。

2

競技に合ったプログラムを選ぶ

サッカーと陸上では多いけがが異なります。自分の競技の特性を理解し、それに合ったプログラムを選びましょう。

3

継続することが大切

予防プログラムの効果は継続によって生まれます。週2〜3回以上、シーズンを通して続けることが推奨されています。

4

痛みが出たら早めに受診を

予防プログラム中に痛みが出た場合は無理をせず、早めに整形外科を受診してください。早期発見・早期対応がけがの長期化を防ぎます。

監修 院長 大橋義徳(整形外科専門医・医学博士・日本スポーツ協会公認スポーツドクター)

参考文献・関連外部リンク

  1. 大橋義徳, 中瀬順介, 虎谷達洋, 小坂正裕, 土屋弘行. 現場が求めるスポーツ傷害予防プログラムに関するアンケート調査. 日本臨床スポーツ医学会誌. 2013;21(3):771-775.
  2. Webster KE, Hewett TE. Meta-analysis of meta analyses of anterior cruciate ligament injury reduction training programs. J Orthop Res. 2018;36:2696-2708.
  3. Takahashi S, Okuwaki T. Epidemiological survey of anterior cruciate ligament injury in Japanese junior high school and high school athletes: cross-sectional study. J Sports Sci. 2017;35(3):266-276.
  4. 福井県統計課. 福井県推計人口(令和3年). 福井県ホームページ. https://www.pref.fukui.lg.jp/doc/toukei-jouhou/zinnkou/jinkou.html
  5. Oshima T, Nakase J, Inaki A, Mochizuki T, Takata Y, Shimozaki K, Kinuya S, Tsuchiya H. Comparison of muscle activity, strength, and balance, before and after a 6-month training using the FIFA11+ program (part 2). J Orthop Surg (Hong Kong). 2020 Jan-Apr;28(1):2309499019891541. doi: 10.1177/2309499019891541.
  6. 公益財団法人 日本サッカー協会(JFA)メディカルインフォメーション — https://www.jfa.jp/football_family/medical/
  7. 公益財団法人 日本ラグビーフットボール協会(JRFU)Player Welfare — https://www.jrfuplayerwelfare.com/
  8. 公益財団法人 日本陸上競技連盟(JAAF)陸上安全ガイド — https://www.jaaf.or.jp/rikuren/safety.html
  9. 公益財団法人 日本体操協会(JGA)傷害発生時の対応動画集 — https://jpn-gym.jp/
  10. 公益財団法人 スポーツ安全協会(Spo-An)外傷・障害予防プログラム — https://www.sportsanzen.org/syogai_yobo/
  11. 公益財団法人 日本テニス協会(JTA)公式サイト — https://www.jta-tennis.or.jp/

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